【短編集】communication
私は、勢いに乗せたまま晴夜の家に向かった。


行かなきゃよかった。


そしたら、まだ一緒にいれたでしょ?


晴夜は、一人暮らし。


アパートの2階。


階段を昇って一番奥の部屋。


-ピンポーン


私じゃない女の子が晴夜の部屋のチャイムを押した。


私ってタイミング最悪。


私は、遠目から見るしかなかった。


はっきり見えなかったけど、女の子なのは確かだった。


スカートはいてたし。


前に晴夜言ってたよね。


女は、おまえしか家に入れないって。


私、笑いながら無理だよっていったら。


一人で来た女は、おまえしか入れないよって。


私に嘘ついてたんだ。


できないなら、はじめから言わないでよ。


私は、呆然と立ち尽くした。


私が何も言わないから?


私が愛想尽かすの待ってたの?


ひどいよ。


今の私には相手は誰とか問題じゃなかった。


部屋に女の子を入れた。


その事実だけが許せなかった。


私が特別じゃなくなったって証拠だ。


私は、ちょっとよろめきながらも家に帰ろうとした。
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