【短編集】communication
「なぁ、今日飲み行かない?渡邉さん。」


「えっ?榊田さん。」


渡邉は、私の名字。


榊田さんは、社内の盛り上げ役的存在。


「今日さぁ。男5人くらいで飲みに行くんだけどさ。男ばっかじゃさぁ」


榊田さんは、飲みに行く人たちを見ながら言った。


私もちら見したら、期待しているような目。


「はい。わかりました。いいですよ。」


榊田さんは、ほか4人にお願いされたのね。


4人てか、3人かな?


私とタメの佐藤くんは、興味なさげだし。


てか、気のせいかな?


佐藤くんに会ったことあるような?


まさか、あん中の1人ではないよね。


そう思いたい。


だって、隙あらばタイプじゃなさげだし。


見た目がそんな感じ。


爽やかなかっこよさ。


なんかスポーツやってました系のね。


私に、そんな知り合いはいない。


私の過去を知っていたらもっと軽蔑の眼差しを浮かべそうだし。


大丈夫。


彼には、バレてない。


バレたくない。


......



えっ?


バレたくない?


意味、わかんない。


そう、思っちゃダメだよ。


私は、もう幸せになっちゃダメなんだから。


罪を犯しすぎた。
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