【短編集】communication
「神崎蘭?」


フルネームで名前を呼ばれた。


誰だよ?とちょっと不機嫌ながらも得意の作り笑顔で相手を見る。


「.....椎野くん。」



クラスメートか。


しかも、さほど話したこともない。


「お前、なにやってんの?」



「散歩かな?」


怪しむように見る椎野くん。


まあ、どう見られようと関係ない。


「女一人じゃ危ないぞ。」

意外にも優しいのね。


見直しちゃった。



「けど、帰るには早いから。」


だって、まだ30分も経ってない。


「早い?」


「とりあえず、11時くらいまでは帰れないから、じゃあね。」


いつもの私なら、うまいとこ切り上げるのに、今日は無理。


すっかり、オフモード。


「待てよ。普段と違うくない?」


普段は、優等生をちょっと演じてるからね。


「違うわけじゃない。素はこんななの。」


やっぱ、この時間にクラスメートに会うのダメだ。


「ふ〜ん。家来いよ。」


よくわからないけど、私は椎野くんに腕を捕まれて逃げれなくなった。


てか、こんな俺様だった?


もっとなんかさ。


まあ、深くは考えないでおこう。
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