【短編集】communication
-頼、ごめんなさい。


私は、心の中で謝った。


ゆいくんは、私を優しく抱いた。


涙を流しながら。


私も涙が流していた。


止まらない行為。


私とゆいくんは、知ってしまった。


終わった後の脱力感。


後悔。


わかっていた。


わかっていたのに。


実感した。


「ごめん。」


ゆいくんが謝った。


「私もごめん。」


私も謝った。


「俺、わかった。ヤることはできても、気持ちがついて行かない。紗英とするときは、満たされたものがないんだ。」


ゆいくんは、泣いていた。


「私もわかった。あの熱くなるものがないの。今あるのは、虚しさだけ。」


私も泣いていた。



「俺ら、知ってたんだな。愛がなにかって。じゃなきゃ、泣けないよな。」


「私、言うよ。もう嘘は付けないから。それで、別れても後悔はない。」


私の目は、希望に満ちていたと思う。


「俺も。紗英に嫌われても仕方ないし。こんな最低な俺を受け入れてくれるかはわからないけど、知って欲しいから。」


私たちは、次へ行ける。


後悔するための相手がゆいくんでよかった。


私たちは、ホテルからでてすぐに別れた。
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