ノクタ-ン ♪ プリ-ズ・Love
アマルフィの静かな夜が、ふけていく…
テラスには、甘い風が優しく吹き上げられていた。
いつの間にか結城と小絵は黙って、
海と向こうに見える、明かりの点いている家を眺めていた。
そう、いつの間にか二人は言葉もいらなくなっていたのだ…
二人とも気づいているはずだ。
お互いの中には、今までと違う感情が湧いてきたのだ。
思いがけない事態となって…互いが言葉を失っている。
探しても、話す言葉が見つからないのだ。
だから、お互いの着ている洋服に目を移そう…
そうすれば、この沈黙は破られるかもしれない。
小絵の着ている洋服は、 いつもの夜用…
つまり、ディナ-の時にはいつも…これを着る。
肩から胸まで、大胆に明いているナイロンニットのワンピースだ。
色は黒、レ-スが肩から、 裾までリボンのようにして縫い付けてある。
小絵の胸もとには…
ロ-ズ クオ-ツのネックレスが、よく似合っていた。
結城の方は…
ブル-の縞シャツに、濃紺のス-ツ。
ネクタイはシルバーグレイに赤の細い縞模様…
でも、小絵の目からは、伊達男…風…。
反対に、
結城は小絵の着ている洋服を、どんなふうに…
見ているのだろうか。