ノクタ-ン ♪ プリ-ズ・Love
夫婦の終わり
そして、圭介は家を出た。
実家の母親に会うために
四国の高松へ帰って行った。
久し振りの故郷である。
そこには、懐かしい母がいるのだ-
長い間、圭介の帰りを待ち続けている母がいた。
実家は高松港から、さほど遠くない所にある。
黒く焼いた腰板を張り巡らした、昔からの白壁の家だ。
町の表通りからは、奥まった所の少し広い路地に- 面している。
その石畳の路地を歩くのは、久し振りだ-
懐かしい感触を足の裏に、感じていた。
歩くたびに、ここちよい-
靴底が蹴るたびに、
石畳に弱い反響を呼んだ。
カチッン、コチッンという- 具合に回りの家の壁にも当たり響き渡っていた。
玄関の格子戸を引き一歩入ると-
もう、懐かしい匂いが、 そこらじゅうにしている。
少しカビ臭いこと、なんか青臭いのは、路地にはびこっている、苔なのか-
そんなことを考えながら -
「母さん! ただいま 」
ごくごく自然に、
言ってみた-