ノクタ-ン ♪ プリ-ズ・Love
紺碧の空の下
その圭介の隣りの座席…
妻が座るはずだったが、
最後まで空席だった。
しかし、そんなことはもう、どうでもいいことなのだと、自分にいい聞かせた。
そのうち、飛行機は一気に降下し、着陸していた。
飛行機の車輪の速度は、尾翼に制御され緩んでいた。
そして、圭介の目の前には、ペレストラ空港が-
無事に到着していたのだ。
圭介はタラップを降りながら、フィレンツェの空気を 思い切り吸い込んだ。
『紺碧色の空気だろうな! そう、決まってるさー』
圭介の胸の中に爽やかな風がいっぱい詰まっていた。
『風は爽やかだが、気温は 少し高いようだ。
上着は要らない-
そう、身も心もね。
軽くなったから-
ありのままの自分で、 生きて行くさー 』
上着を手に歩く姿は- 典型的な旅行スタイルである。
濃紺のスラックスに、サ-モンピンクの半袖のポロシャツ-
大きなトランクが一個に、 ショルダーバッグを肩に掛けて、
まあ、48才にしては、二つや三つは若く見えるだろう。
その圭介が通関の手続きを済ませて、フロア-へと向った。
空港の中は、世界中から集まって来た旅行者が、
群れをなし、ざわめいていた。
その中の日本人は、いろんな国からの旅行者の数に比べたら、ほんの一握りに見えた。
それだけ、フィレンツェは 世界中の人々に愛されていると、いうことなのだろうか……