高校三年生
その日は,予備校もなかったので,どこにも寄らずに駅に向かった。
駅はいつになく人で溢れていたが,理由はすぐにわかった。
錦糸町で人身事故が発生したためにしばらく電車が動かなくなってしまったようだ。
困った僕は,携帯を開き交通情報を見ようとしたその時,
不意に山岸エリの姿が目に飛び込んで来た。
僕はどうしたら良いかわからなくなって,逃げ出そうと思ったが,彼女は僕に気が付くと,こっちにやってきた。
「やっほ♪山西クンも千葉方面だったんだ??人身事故だって…しばらく動かないね…」
と困った顔をした。
(カ・ワ・イ・イ!!)
「そ,そうだね,エ…いや,山岸さんも千葉方面だったんだ?どうしよう,しばらく動きそうにないね」
僕は完全に冷静さを失って,噛みまくりながらそう答えた。
「あはは♪エリで良いよ,山西クン♪」
笑いながら彼女はいった。
「じゃぁ…エリって呼ぶね」
めちゃくちゃ嬉しかった。
「うん♪じゃー私は山西クンのこと,俊輔って呼ぶね♪」
彼女がそう言った時,僕は本気で死んでも良いと思った。
だが僕はすぐに,さっきの練習のことを思い出してしまったんだ。