一目惚れの君【短編】
このバンドだからそう思えるのかも
二時間吹きっぱなしの部員たちは最後の響きにたっぷりの余韻を残した。
アンコールを誘うように。
それに応える観客たちも拍手をやめない。
まだ終わらないで
強く強くあなたを見つめる。
気付いて欲しい
なのに
気付いてほしくない。
きっとそんなことがあったならあたしは想いをもっと寄せる。
だから目を合わせてはいけない。
だけどこっちを見て欲しいと願ってしまった。
《それでは、アンコールですっ!!》
司会の声と共に、誰でも聞いたことのあるポップスが鳴り響いた。