心ノ囁キ ーサヨナラのオトー
それから毎日、
乃栄が屋上へ行くたびにそこに朔哉はいた。
日に日に乃栄も読書ばかりでなく、朔哉とも仲良く会話するようになり、
朔哉も徐々に乃栄のボケのようなものにも慣れてきたのだった。
話しているうちに二人が気づいたのは、
あの出会いは、いつ起こってもおかしくなかった…とゆうこと。
その理由は、
実は、乃栄は普段から屋上に(読書が目的で)サボりに来ていたが、
朔哉も同じくらいの時間に(寝ることが目的で)サボりに来ていた。
例えるならば、
一つの部屋に二人の人間が薄ーい壁を挟んで、
背中合わせに座っているものの、お互いの存在に気づかないというパターンだろう。
その日も同じように、
偶然にも2人がまた出会って会話していた。
すると突然、乃栄が声を上げた。
「あ!!ねぇ、私と一緒にこれから学校サボんない?」
「…え?」
「ほらっ!どうせ暇なんでしょ?」
「は!?!?」
乃栄は強引に朔哉の手を握り
学校を抜け出して行った。
ちなみに言ってしまうと、
この時まだ乃栄は、
彼の抱え込んできた大きな不安と経験を
理解しきっていなかった。
_