心ノ囁キ ーサヨナラのオトー
ヒゲキ
学校に戻らなかったことが頭をよぎったが、今の乃栄にはどうでもよいこと。
「すっかり暗いな。」
ふと見上げれば大好きな空。
深く深く吸い込まれそうな青。この青は夕日と混ざって、紫になっている所もあった。
無表情にしばらく空を眺め、最初に浮かんだこと。
「今日の私はおかしかった。」
こんな気持ちになったのは久しぶりだ。
心が、回復しつつある。
「そんなの…だめ、私は許されてはいけないんだ。」
まるでスタッカートのように心が弾む。
空が、世界が、明るく見える。
無意識に出る笑顔と、本音。
そしてそれを拒もうとする苦い気持ち。
「今日の私は私じゃない。だから、忘れて。」
どうしても消したかったのは
高鳴るこの胸の感情だった。
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