抱けないあの娘〜春〜
そのハンカチからなのか、天女からなのか、甘く鼻を擽る香りがふわりとした。

まるで僕の周りだけに春が訪れて来たような香り。


もう滴なのか汗なのか解らないほど緊張している。


「高村、紹介するよ。俺の双子の姉貴のさつき。実家に帰った時にさ、バッティンググローブ忘れちゃって、さつきに届けてもらったんだ。」


「あ、初めまして、菖汰の姉のさつきです。いつも菖汰がお世話になってます。」

とペコリと頭を僕に下げた。頭を上げた瞬間、またあの香りが僕の鼻腔を擽る。

「いや、お、お世話だなんてそんな…ぼ、僕は…」


あ〜!!静まれ心臓っ!!





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