抱けないあの娘〜春〜
「…可奈。」
僕は怒りを沈めながら話しかけた。
「彼女は僕の大切な人だ。それにもう僕達はとっくに終わってるよな?彼女に絡むのはやめてくれ。」
「何それ。意味わかんない。咲哉はずっと私のものなんだから、そんなの絶対許さない!あんた、いつまで咲哉の隣にいんの?さっさと消えなさいよ!」
付き合ってる頃から気に入らないことには徹底的に毒を吐き、支離滅裂な我が儘を言う彼女に疲れた僕だった。相変わらずなんだな…
「可奈、いい加減にしろ。」
「だって〜せっかく会えたのに〜!絶対離さないんだから!」
甘えた猫なで声で抱き着いてくる。
ふとさつきを見ると、大きな瞳に涙をいっぱい溜めて…
くるりと背を向け、走り出してしまった。
「ちょっ…さつき!!」