抱けないあの娘〜春〜
急いでグラウンドの外へ出たが、さつきさんの姿が見当たらない。


野球部のグラウンドは住宅街の上の小高い丘の中腹にあり、その住宅街にバス停がある。道は一本道だ。グラウンドの上にはお寺と墓地がある。


僕は下り坂を走り、バス停付近でさつきさんの姿を探した。


もう辺りは薄暗くなっており、住宅街の外灯が点き始めた。


バスの時刻表を見ると、まだバスが来るまでは時間がある。


「…筋金入りの方向音痴」


諏訪先輩の声が頭を過る。


まさか…
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