抱けないあの娘〜春〜
第九章
今日は咲哉の誕生日!!
いつも待ち合わせにおくれてばっかりだから、今日くらいは咲哉を待たせないようにしなくちゃ!
早足で駅へと向かう。
それにしても…約束の時間までまだ30分もある。張り切りすぎちゃったかな?
三寒四温とはいうけれど、まだ午前中の風は頬に冷たい。
先にスタバに行って待ってようかな…
歩き出そうとしたその時、不意に肩を叩かれた。
振り向くと…
可奈…さん…?どうしてここに…?
あのパーティー会場での向けられた悪意が一気に蘇る。
「やっぱり…あなたね。ええと…名前聞いてもいい?」
「あの…何か…」
「あたしの通ってるボイストレーニングのスタジオがこの近くなの。あなたをどこかで見たことあるな〜と思って。あ、あたし三谷可奈。あなたは?」
「諏訪…さつきです。」
「今日、咲哉の誕生日でしょ?まさか待ち合わせとかじゃないでしょうね!?」
「いや…あの…」
可奈のあまりの迫力に後退りしてしまう。
「言っておくけど、咲哉は私のものなの。今日はボイトレと撮影が終わったら咲哉と会うの。あなたははっきり言って邪魔なのよね。」
「え?…今日咲哉は私と…約束…」
「だーかーらー!!邪魔だって言ってるじゃない。咲哉と私の仲に入り込まないでくれないかな?あなたにはわからない私達の歴史があるんだから!」
こちらが何かを言い切る前に、可奈さんが畳み掛けるように攻撃的に詰め寄ってくる。