抱けないあの娘〜春〜
でも、彼の胸の温かさと自分の中から溢れてくる何とも言い難い感情に戸惑い、彼の顔を見ることが出来なかった。


「暗いし、危ないから」
とそっと私の手を繋ぎ、バス停まで送ってくれた。

その道程は、遠いようで近く感じた。


お互い、名前を交換しただけの、淡い時間。



高村咲哉さん…


さつきはそっと呟いた。


そして、彼の温かさを思い出していた。
< 19 / 208 >

この作品をシェア

pagetop