抱けないあの娘〜春〜
決勝打を打ったキャプテンは取材が殺到し、僕や坂出にも沢山のフラッシュが。僕達は興奮覚めやらぬまま寮に戻り、改めて優勝の喜びに浸った。
坂出は真咲にメールで優勝を報告し、甲子園での再会を約束していた。
良かったな、坂出…真咲も喜んでるだろうな。ずっと会えなかった二人には、何よりのプレゼントに違いない。坂出は目を潤ませて、じっと携帯の画面を見つめていた。
諏訪キャプテンは、また可奈に寮に乗り込まれるのを避けるべく、電話で押し問答していた。
「お前な…泣くかしゃべるかどっちかにしろ!甲子園に来てもいいが、宿泊先には乗り込むなよ!」
頭をボリボリかきながら怒ってる。でも何だか嬉しそうだ(笑)
選手の皆が家族や恋人へ、嬉しい優勝の連絡を取っていた。僕はいつもの屋上へ行き、さつきへ電話をかけた。
「もしもし、さつき?」
「咲哉!今どこにいるの?」
「どこって…寮の屋上だよ。」
「咲哉、グラウンド見て?」
屋上から、グラウンドを見下ろすと…
さつきが手を降っていた。