抱けないあの娘〜春〜
「さつき、いきなりだけどこれからデートしよ!どこ行きたい?」
「え!?私は嬉しいけど…咲哉疲れてない?」
「ぜんっぜん大丈夫!!さつきの顔見たら疲れなんて吹っ飛ぶよ。今日は…暑い中応援ありがとうな。僕バッターボックス立った時にさ、さつきの声が聞こえたような気がしたんだ…」
「え…本当に?」
さつきは大きな瞳をパチクリさせて、顔を真っ赤にして体をモジモジしてる。
「さつき?どした?」
「私…ね、咲哉がバッターボックスに立った時、思わず…必ず打って私のところへ帰って来て!って叫んじゃったの。今思うと恥ずかしくなっちゃって………きゃっ!」
僕はさつきを思い切り抱きしめた。嬉しかった。心から愛しいと思えるさつき…僕らの出会ったグラウンドで、君を抱きしめられる喜びを噛み締めていた。
僕はさつきの黒髪に顔を埋め、囁いた。
「…打って帰って来たよ。さつき、ありがとう。」