抱けないあの娘〜春〜
僕は慌てて湯船から出て、


「のぼせそうなんで先に上がります。お疲れっした!」


と諏訪さんに一礼し、風呂場を出た。



風呂場から出ようとした時、諏訪さんが何か言ったような気がしたが、とにかく僕はこの場から逃げたかった。



ジャージに着替え、寮の屋上に出た。


何となくまだ部屋には帰りたくなかった。



誰が引っ張り込んだのか、屋上には古いソファーが置いてあり、落書きがいっぱいしてある。



目指せ甲子園!


打倒、海成学院!!


彼女募集中。ヤりて〜!


など、まるで絵馬のように沢山の願い事が書いてあるソファーに身を沈めた。


体が火照って仕方無い。


さつきさんを抱きしめた感触がまだ残っている気がした。


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