抱けないあの娘〜春〜
その女の子は驚くほど肌が白く、風に翻るスカートから見える脚は折れそうに細い。風に潤んだ大きな瞳、寒さできゅっと結んだ唇が、赤みを一層増している。首に巻いたマフラーの白と靡く黒いストレートの長い髪が、まるで風の中から現れた天女のようだった。


僕はあまりの美しさの彼女から目が離せなくなっていた。


棒立ちしている僕にキャプテンの諏訪さんが駆け寄ってきた。


「おい、高村、大丈夫か?」

何度も名前を呼ばれたみたいだが、僕は彼女から目を離すことが出来なかった。

「大丈夫ですか?」


とその彼女から声を掛けてきた!!


「あ、あ、は、はいっ!!だ、大丈夫っす!!」


天女は固まったままの僕を見て、クスリと笑った。


「大丈夫そうには見えないですよ?これ、使って下さい。」とハンカチを差し出した。


顔を洗ったまま拭くことも忘れ、ポタポタと流れ落ちてる滴。


「い、いや、だ、大丈夫っすよ!!」ああ、もう舌を噛みそうなくらい焦ってるよ!!


「風邪引いちゃうと困るでしょ?遠慮しないで下さいね。」


とハンカチを僕の頬にあてた…


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