抱けないあの娘〜春〜



ったく…



靴なんて何だっていいのに、面倒くせ…



メンズのフロアに行こうとしたら、さつきが駆け寄ってきた。




「咲哉、本当に私なんかがパーティーに行っても大丈夫なの?やっぱり…私帰ろうか?」



「いや、むしろいて欲しいんだよ。僕はパーティーってあまり好きじゃないけど、さつきが一緒なら嬉しいよ。親父はちょっとしたパーティーだって言ってたし、つまんなかったら抜け出しちゃおうぜ。」



「でも…ドレスや靴やバックまで買い揃えそうな勢いなんだもの…何だか悪くて…」


「親父がさつきをどうしても連れてこいってうるさいんだよ。お袋も、僕の妹が宝塚に行っちゃってから寂しがってたみたいだけど、今日はさつきと洋服選びをかなり楽しんでるよ。申し訳ないけど、付き合ってやって。金は親父が出すって本人了承済みだから、気にしないでいいんだよ。」



「妹さん、宝塚なの!?」



「そう、来月から宝塚音楽学校に入学するんだ。親父とお袋は反対したんだけど、本人がどうしてもってね。」



「凄い…宝塚って入るの大変なんでしょ?」



「僕はよく解らないけど、小さい頃からバレエとピアノは習ってたし、中学の部活も声楽部だったから、大丈夫だったんじゃないの?」



「いやいや、そんな簡単じゃないはずよ!!だって東の東大、西の宝塚っていうくらい難関だってお母さんが言ってたもん。」



「へぇ〜知らなかったな。あ、そうだ、お家に連絡入れないとまずいんじゃない?少し遅くなりそうだし。」



「そうだ!忘れてた!」



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