‡パルソナ‡ 孤高の唄姫


「二人ともそんなに急いでは、転びますよ。」


レイの言葉にも耳を貸さず、ノエルはあたしの手を引き、そそくさと螺旋階段を降り続けていく。


あたしはレイの方を振り返ると、レイの穏やかな笑顔が見えた。


レイの顔が少し赤いような気がするけど………気のせいだよな。



そんなレイに集中しすぎてたあたしは、またこけそうになって渋々前に向き直った。








会場に着くと、ノエルはあたしの手を離した。



「なんだよ、急に積極的になりやがって?」


「うっせぇな。俺の勝手だろ

とにかくここからはお前一人でなんとかしろ。まぁせいぜい頑張って"あいつら"の相手してやれよ」


ノエルは吐き捨てるようにそう言うと、あたしに背中を向けて歩き始めた。


「えっ、ちょっ!なんなんだよ!!"あいつら"って…」


「あらぁ、あなたが大空に選ばれし者ですのぉ!」



あたしがノエルを呼び止めようと手を伸ばした先に、突如貴婦人が目の前に現れた。


「えっ、まぁ…そうですけど…」



さすがのあたしも、貴婦人の圧力に自然と敬語になってしまう。



なんか、家の近所のパーマのおばちゃんに似てる;



「聞いてますわよぉ!旅に出られるんですってねぇ!」



「はいぃ;」



その後のあたしは長い間、その貴婦人の話を相槌を打ちながら聞くはめになる…;


それは近くのおばちゃんの愚痴を聞くよりも苦痛な物だった。



.
< 70 / 371 >

この作品をシェア

pagetop