‡パルソナ‡ 孤高の唄姫


あたしはあの時の事を思い出し、顔を俯かせたけど、すぐ顔を上げノエルの目を見返す。


「これは"あたしの恩人"から教えてもらったんだ。だから今度はあたしがノエルに教えてやるよ。」



そう言うと会場から微かにあたしを呼ぶレイの声が聞こえた。



何だろう?


「なんかレイが呼んでるみてぇだから、そろそろ行くな。」


ノエルに軽く手を振ったあたしは、ドレスを翻し、そっとベランダから出て行った。







茜菜の背中を見送ったノエルは、ベランダの手すりに背中を預ける。



『笑った方が絶対いいよ!!』


茜菜の言葉がノエルの頭で流れるように浮かび上がる。


腕を組み、どこか思いつめているような表情のノエルは顔を上に向かせ、空を仰いだ。







『私、ノエルの笑った顔、好きだなぁ』







ノエルの手を包み、笑顔を浮かべる幼き少女




それは、ノエルの遠い日の儚き記憶



「……なんで、どいつもこいつも同じ事を言うんだよ…」


ノエルの悲哀を含む瞳には、果てしない空と幾千の星たちが映し出されていた。




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