桃川中学校吹奏楽部
窓ガラス事件から何週間かたった

「きをつけーれいー」
 

「さよーならー」

皆が一斉に動き始めた。


「優里亜ーいこー」


葉月が私のところへきた。


カバンを肩からさげて目線を上げると


グローブが入った袋を持った倉本君と目があった。


2秒ほど時が止まった気がした。


気まずくなって目をそらすと


二人は別方向へいった。


倉本君と目を合わせると


左胸の奥が熱くなるのがわかる。


でもまだこれは


好きじゃないよね


きっと。


絵梨やあさみ、知夏、菜々と音楽室へ向かう。


きまった位置に荷物をおいた。


音楽準備室に入ると、真新しいホワイトボードが光っていた。


この大きなホワイトボードは、先月についたばかり。

ここに練習予定や、連絡、欠席早退理由をかけるようになっている。


ホワイトボードには 個人・パート

と部長の字で書かれていた。

「個パだってー」

「楽器だそっかー」

すると、オーボエの2年生、中田先輩が入ってきた。


「こんにちはー」

私達が挨拶すると

「こんにちは!」

と笑顔で返してくれた。


中田先輩は、背は小さいが

丸い目に丸いかわいらしいボブが印象的だ。


先輩は、オーボエの入っている引き出しを開けた。


「えっ・・」


「うそ・・・」

先輩が声をあげる。
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