【完】キス、kiss…キス!
「俺、ホントはカッコ悪いくらい不安なんだ。10歳も年下で、年も性格も子供だし、姫さんは綺麗だし」


花火の光に照らされた、幼さの香るナオちゃんの顔は、何よりも、誰よりも綺麗。


言葉を詰まらせていたナオちゃんの花火が光を失うと、ナオちゃんがすぅっと息を吸ってまた気持ちを音に変えていく。


「いつか、幸四郎さんみたいなカッコイイ大人の男が現れるまでの繋ぎなんじゃないかとか、バカみたいなこと、いつも思ってる。そんなことないって分かってるよ?けど、それでもやっぱり不安になっちゃうんだ」


ナオちゃんから零れた不安。それは、私がナオちゃんに抱いていた不安と一緒で、余裕ないのは、必死なのは私だけじゃないことが初めて分かった。


「早く大人になりたくて、いつも不安隠して来たけどさ。……俺、もう止めた。だって、何歳、何10歳離れてたって、人を好きって気持ちは変わらないもん。俺は『桶川姫子』っていう一人の女の人を好きになったんだから!」


あの沈黙の間に、ナオちゃんはそんなことずっと考えて、私に伝えようとしていたんだ。
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