【完】キス、kiss…キス!
「うーん、俺は尚志、ちゃんとしてるし、だらしねぇ姫子には丁度良いと思うけど、ババアがなぁ、何ていうか……」
ものの数分ですっかりナオちゃんのことを気に入った智だけど、楽しく話していたのにふと、ボソッと呟く。
「もしかして智がここに来た理由ってお母さんのことで?」
私が睨むと、智はぎっくりした顔をして、ここに来た理由を告げる。
「実はさぁ……ババアの奴、姫子を結婚させようとしてんだよ」
智から告げられたそれは、身勝手で最低最悪な内容の真実。
「それ、どういうことですか?」
私より先に聞いたのはナオちゃんだった。その尋ねる顔は、心中穏やかじゃないのを隠しきれない様子。
「いや、な?26歳ったらもう婚期来てるわけじゃんか。だけど、姫子からはまーったく彼氏の紹介もねぇし、しかもババアは姫子にいいとこの坊ちゃまをくっつけたいらしい……見合いをさせたいみたいだ」
だから、智を偵察を兼ねて遣わせたってわけ?なんて勝手な人なんだ。昔からあの人はそうなんだよね。