【完】キス、kiss…キス!
「とりあえず、転がしとくわけにもいかねぇし中に運ぶぞ。それとも、このまま庭に埋めちまうか?」


そんなシャレにならないことを言いつつ、智さんはお母さんを担ぎ中に入って行く。


「ナオちゃん、行こっか」


困ったように姫さんが笑い、俺も遠慮がちに桶川家の玄関を跨いだ。


外観の美しさもさながら、中も綺麗で、隅々まで掃除が行き届いてる。


「実家なのに落ち着かないわ。いるだけで疲れちゃう」


姫さんは首をぐるぐると回し、疲労困憊のオーラを身にまとい廊下を歩く。


食事を取るであろう広間にたどり着き、襖を開けると、智さんに先に運ばれて行った筈の顔色の悪いお母さんが、ふらふらと歩いて来た。


「大変失礼な態度を取りました。姫子さんの恋人ってことは職場の方かしら?お若く見えたので、申し訳ありません」


それはそれは丁寧に謝罪をするお母さんにはとても申し訳ないけれど、智さん曰わく『隠し玉』であるあれ、隠し通せるものでもないし、今言っとこう。


「すみません……今年高校生になったばかりで、16歳です」



……姫さんのお母さんが再び智さんに倒れ込んだのは言うまでもない。
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