【完】キス、kiss…キス!
「ナオちゃんって、日本文化みたいの大丈夫な方なの?」


お茶を嗜んでいる事実が余程意外だったのか、姫さんが瞼をしぱしぱとひっきりなしに瞬かせ、俺に尋ねる。


「お茶は小さい頃からお茶はたまに。他にも、日舞なんかもちょっとやってたよ?だから、歩き方とかも静かな自信あるし、正座も全然苦手じゃない」


日舞は母さんの趣味で、一緒に1年くらいやっただけなんだけど。


「ってことで、広瀬尚志、出撃します!」


ここでうだうだしていてもしょうがないと息巻き、俺がびしっと敬礼すると、智さんから敬礼返し。


こんな時いつも乗ってくれる姫さんは、今は不安そうに俺を見つめていた。


その視線を一旦置いていって、襖を開けて、一番奥の部屋まで歩いて行く。ここが茶室みたいだ。


俺は、襖の前の廊下に膝をつき、正座に近い体勢になる。


「失礼致します」


軽く挨拶をして、三度に分けて襖を開いた。


開くと、さっきより髪の毛をきちっとし、うなじを見せるような髪型のお母さん。


「……一体何の御用ですか?」


あの刺さるような、冷たくて鋭い視線に一瞬怯んでしまったけど、めげないぞ、俺!
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