【完】キス、kiss…キス!
「姫子さんから伺いました。実は僕、祖母が裏千家の師範代でして、お茶を嗜んでいます」


「そうなんですか?それなら、是非お点前を拝見したいものです」


それはもしかして、茶室に招かれた?まさか、お母さんの方から言い出してもらえるなんて、思ってもみなかった。


驚きと少しの喜びをぐっと飲み込み、俺は彼女にとっての神聖な場所である茶室へと、足を踏み入れる。


目の前には白竹の茶碗。俺は、おばあちゃんと幾度となく行った作法の通りに、身動きやお茶のたて方に気をつける。


もちろん、お茶をたてる前の『空手水』も欠 かさない。


俺が空手水で手を清めているタイミング、でお母さんが和菓子を含んだ。


ちなみに、この一連の動作は基本作法。裏千家は表千家より派手だと言われている。


それは、一連の作法もそうだが、女性の袱紗が柄物であることが許されてるからだと、昔おばあちゃんが教えてくれたことを思い出した。
< 186 / 318 >

この作品をシェア

pagetop