【完】キス、kiss…キス!
私はそっとドアの前まで近寄り、寒さでか、体が震えてる人影を見て驚く。


「な……ナオ、ちゃん?」


そこには朝の通称ダックスフントの子犬ちゃん、ナオちゃんこと広瀬尚志君がいたのだ。


「おかえり、姫さん」


ナオちゃんは何事も無かったかのようにふにゃあっと笑い、長い折り畳んでた体を立ち上がり伸ばす。


「どうしてここにいるの?」


「どうしてって、俺、ちゃんとメールしたよ?」


その返事に、私は慌てて携帯を確認する。


……ホントだ。朝から見ていなかった携帯の新着メッセージには、『送ってくれてありがとう!お礼もしたいし、今日も会いに行っていいですか?』というナオちゃんからのメールがあった。


「いつから……待ってたの?」


「んっとね、塾の帰りそのまま来たから……4時間前、かな?」


ベビーフェイスが再度ふにゃあと笑顔になり、それに比例して、私はすごく罪悪感でいっぱいになり、胸が苦しくなる。


「とりあえず、中に入って?寒いよね?」


4時間も待っててくれてたナオちゃんをこのまま帰すなんてことも出来ず、私は家の中へ細くて大きな体を押し込んだ。
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