【完】キス、kiss…キス!
相変わらず怒りさえ感じない無表情なナオちゃんは、高坂さんの問いには答えず、ふいっと顔を背けた。


「行こ、姫さん。あの顔面見てると気分悪い」


「あ……うん」


ナオちゃんは私を引っ張りすたすた歩く。さっきは下駄で歩きにくいだろうって気遣ってくれたけど、今のナオちゃんにはその余裕はないみたい。


「待ってよぉ!美里も一緒に回りたいー!お姉さんも一緒でいいからぁ」


高坂さんは、そんなナオちゃんの気持ちなんか無視で、空いてる腕にしがみつく。


「ああもう、欝陶しい!俺はデート中なんだよっ!高坂マジうざいから!」


「えぇー……その人彼女ぉ!?年下好きとか、このオバサンマジキモいんですけどぉ」


高坂さんの言葉が、ギャグのようにぐさぐさと刺さり、立ち直れなくなりそう。


「尚志ぃ、こんなオバサン止めて私にしなよぉ。絶対私達の方が釣り合ってるじゃん」


確かに、二人の方が若くて美男美女だけどさぁ、言われっぱなしだとむっとくるよね。
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