【完】キス、kiss…キス!
「高坂っ!」


優しいナオちゃんは、自分が彼女を傷付けてしまったんだと我に返り、走っていく高坂さんの方を振り返る。


取り巻きの子達は、既に高坂さんを追い掛け始めていた。


「……ゴメン、姫さん」


ナオちゃんは、今にも泣きそうで、それでいつ切ない顔で私の手を離した。


……待って、待ってよ。追いかけないで。恋人は、ナオちゃんの恋人は私なんだよ?


でも、言えない。行かないでなんて子供じみたこと、言えないよ。


結局、私って最後には本音が言えない。


あの時……秋斗の時だってそう。好きだから別れたくないのに、怖くて言えなかった。我が儘言って重荷になりたくなかったんだ。


こんな惨めで、いつも大事なことが言えないで幸せがすり抜けていく自分が大嫌い。


私は、小さくなってくナオちゃんの背中をずっと見つめて、一筋の涙を、頬に流した。
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