【完】キス、kiss…キス!
ユニフォームに合った赤いエナメル質のスパイクが、太陽に反射して足元をキラキラと輝かせている。


まるで、ナオちゃんの足元に、流れ星が沢山流れているみたい。


審判がマイクを握ってスタートのコールをし始めると、こちらも緊張感が高まる。


『位置について』


そう言うと、選手達がトラックに向かってお辞儀をして、軽く手首や足首を回しながら配置につく。


ナオちゃんは内側から二番目のトラックで、トントンとリズムを取って軽く飛び上がり、走る体勢に入った。


『よーい……』


審判がピストルを下に向けた瞬間、選手達の引き締まった腰が高らかに上がる。


先に白い煙が上がり、選手達がスタートして遅れ気味にピストルの音がこちらにも響く。


100メートル。たった10秒ほどの時間。ナオちゃんは、確実に他の走者より、風のようなスピードでそこを駆け抜けていた。
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