【完】キス、kiss…キス!
早苗ちゃんのチームはど真ん中の、手前から数えて3番目。


ピッピッピー、と甲高いホイッスルの音が響いて、背泳ぎの選手達が入水する。


続いて『take your mark』と審判が言うと、彼等は金属の手すりを掴み、体を丸めた。


『get set』と言われると、各校の応援席から、低い『オオオ……』といううなり声が上がる。


パン、と乾いた銃声と共に、そのうなり声が『セイ!』と叫び、丸まっていた選手達が伸びやかに体をしならせ、水中で足をゆらゆらとキックし泳ぎ始める。


早苗ちゃんのチームの最初の子は、100メートルを5位でゴールしてきて、次の子へ。


「あ、次の先輩はインターハイで全国出た人だから早いよ」


「へぇー、ホントだ。めっちゃ早い!」


ナオちゃんの言う通り、次の子の平泳ぎはぐんぐんと首位との差を縮め、5位から3位まで浮上する。


水面を蹴る、水のパシャパシャという独特な音が、彼等懸命な姿を引き立てる。彼等は、照明に照らされて微かに飛ぶ水しぶきと共に輝いている。


「んー!陸上もいいけど、水泳も爽やか!素敵だなぁ」


「今、丁度水泳のシーズンだしね。姫さんは水泳は見る専門の方が良さそうだけど」


ああ、私も健康維持とプライドを取り戻す為に、水泳始めようかしら。
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