【完】キス、kiss…キス!
彼も私を真似るようにコーヒーカップから口を外さないまま時計を見ると、その瞬間、ぐぷ、と頬を膨らませて、んぐんぐ音を立ててコーヒーを飲み込んだ。


「わりとヤバい!学校遅れちゃう!どぉしよー!」


時計から私の顔に目線を戻したその顔は、キュンとするしかないような甘ったるい顔。


……そんなうるうるした瞳で私を見つめるなぁ!


っていうか、やっぱり学生じゃないのよっ!なんて、冷静になって自分にツッコミを入れる。


「大学どこ?車で送ってあげるから」


私が言うと、くりくりの茶色い瞳が嬉しそうに光を帯びた。絶対送ってもらうの狙って言ってるくせに、何でか許せてしまう。


子犬だったら、絶対短い尻尾が小刻みに動いてる顔。


「ありがとー姫さん!でも、ひとつ間違ってることがあるよ?」


「な……何でしょう?」


というか、そもそも間違いは貴方と関係持ったダメな大人、私だと思います。


なんて思いつつ、彼……『ナオちゃん』の言葉に耳を傾ける。
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