はんぶんお月様〜僕と小さい君の7日間〜
繁華街にある小さなコンビニに着いて、
制服に着替えていると、
ちょっと小柄で色の白いあいつが声をかけてきた。

「おう、いつもしけた顔してんな!」

今日のバイトは、カズが一緒か。





こいつにも、夢がある。

役者だ。


小さな劇団で、小さな劇場で芝居をしてる。
何度か見に行ったが、
難しい内容すぎて、
僕にはまったく理解できない。
きっとお客も理解できないんじゃないかな。

だから、
小さな劇団なんだなと。


そんなことを想像する自分に、
情けなくなる。






それが、今日は違った。

「俺さ、実はTVのドラマに出るんだよ」

「え?」


なんとなく、青ざめる自分がいる。


「ドラマのプロデューサーが、たまたま俺の舞台を見に来てて、声かけてくれてさ。
結構出番の多い役なんだぜ。」

「・・・・そっか、やっと役者らしくなってきたな。」


そう言うのが、精一杯だった。


「俺、しばらくバイトに出てこれないから、寂しくなるだろうけど、
お前も頑張れよ。」

「ああ。よかったな。」




なんだ、この絶望感は。



劣等感。



最悪だ。




顔に笑顔を作ろうとすれば作ろうとするほど、
ゆがむ。

何故、素直に友達の幸運を喜べないのか。






バイトが終わるまで、
カズは笑顔で、さらにテンションがめちゃくちゃ高くて、
僕は、背中に暗闇を背負っていた。
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