シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
 館長は顔を下に下げる。彼女はこれを間近で見ている。よりショックだったに違いない。


「悲しすぎるね……。知っている人を自分の手で最後を下すのは……」


 ルシアが泣き崩れる。館長がそれを見てゆっくりと彼女を立たせ、背中をさすり落ち着かせようとする。


「私も悲しんだ。もちろん彼も同じように悲しみ、苦しんだと思うわ」


 シェイクはそれをただ見ていることしか出来なかった。三年前もそうだった。委員長を自分の手で最後を締めた時、自分は目の前が暗くなった。目の前が明るくなった頃には、自分は彼女の死に涙を流すことはなかった。


 ――そんなに俺は出来た人間じゃない。もし、本当に悲しんで苦しんだなら俺は……。もっとうまい立ち回りが出来たはずだ。犠牲者だってこれよりもずっと抑えた。俺がちゃんとした人間じゃないから……。


「どうかしました?」


 館長の言葉にシェイクは現実に戻る。辺りを見渡すが特に何も変わっていない。


「いえ……。何もありません……。死というものは悲しいですね」


 館長はシェイクの言葉にゆっくり頷いて次の場所に案内するためにルシアを連れて教室を出た。シェイクは二人がいなくなったのを見て、誰かを呼ぶように話しかける。


「なあ……。委員長はどうなんだ?俺はこれで良かったんだよな?俺はそんなに立派な人間じゃない。館長はああ言ってるけど、俺は殺人鬼なんだぜ?もし委員長が生きていたら俺のことなんて言うのかな?」


 シェイクの呼びかけに答える人も肯定する人もこの教室には誰もいない。

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