シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
「今日は本当に御苦労さまでした。これで記念館の見学ツアーはすべて終了です」


 校舎を一周し下駄箱の前で館長が労う。ほとんどが新聞のスクラップからの抜粋だったが、床に残った血の跡や館長の説明でそれらの欠点をカバーされていた。


「この事件はずっとこの国では語り継がれるはずです。私が館長職を辞めてもずっと後世にまで残すべきものだと思ってます」


 館長の最後の説明が終わると、彼女は一人の女性に戻った。ふっと浮かべる笑顔はとても嫌いであった。


「そう言えば館長。さっき言っていた『彼』とは誰なんですか?」


 ルシアの質問にシェイクと館長が目を見開く。シェイクの方は二人に気づかれていない。館長がゆっくりと低く話す。


「彼はこの学校で一番の銃の使い手でこの学校の警備も兼ねていました。この国では学校で一番銃の名手にだけ実弾の装備を認められていました。学校が事件に巻き込まれた場合、その人が率先して事件の解決をするのですが……」


 そこで館長は話すのを一度止める。呼吸を整えて続ける。


「彼が犯人射殺し事件は『解決』しましたが、被害者の保護者が『ここまで被害が大きくなったのは警備の任についている彼の失態だ』と言って彼を非難し続けて彼はひどく弱ってしまいした。そして彼は自分の誕生日の夜に国から離れました」


「彼がいなくなったことで国に変化は?」


「彼の実家が――ここから少し戻ったところの中央区にあったのですが、そこが暴動で燃やされてしまい、今はこの北区で銃器点を営んでおります」


 それを聞いてルシアはやりきれない顔をした。


「この事件は彼のせいではないのに。逆にこの事件を解決したのは彼のおかげではないんですか?」


「はい。私は彼が犯人を射殺するところを見ております。私は抗議する人たちを説得してきましたが、駄目でした」
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