シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
 空腹がシェイクを起こした。まだ夜明けには程遠い時間だ。シェイクはあのまま寝てしまったようだ。ぼうっとした表情のままゆっくりと体をほぐす。隣のベッドは使われた形跡がない。つまりルシアは帰ってきていないということだった。


「あいつ……どこ行ったのかな?」


 この国にはルシアの知っている所は何一つない。知っているとすれば記念館ぐらいだ。そうなると館長のところで厄介になっていると考えた方が高い。とうことは、


「結局、親父の家に行けってことか……」


 シェイクは気づいていた。記念館にいた館長は自分の許嫁であったことを。何も知らないふりをしていけば他人と間違うかもしれないというシェイクの計算は見事に外れたわけだ。三年という月日を長く感じたのはシェイクだけだったのかもしれない。


 そして彼女はまだシェイクの実家で暮らしているのかもしれない。ルシアに会いたければ、両親と会わないといけない。そして自分の口で勝手に出て行ったことを詫びなければならない。


「考えても仕方ないか……。これじゃちっとも変わってない。少しは大人になったところ見せてやらないとな」


 そう言ってシェイクは寝癖のついた髪を直し、夜も開け切らぬうちに車を走らせる。目指す場所はルシアがいるだろう自分の実家だ。
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