シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
 館長はルシアに事の次第を話した。ルシアには到底納得しきれるような内容ではなかった。


「私にはこの結婚を逆らう権利はなかったの――かといって彼にも逆らう権利はないのだけどね」


「私、旅をしていろんな国の人とお話をしました。やっぱりそういう国がありました。


『子供は絶対に生みの親の言うことに逆らってはいけない。もし逆らった場合はその子供を殺しても構わない。』って。でもおかしいと思います。子供でも一人の人間です。彼らにも自由に生き理権利はあるはずです。シェイクはそれを――」


 ルシアの力説を館長が遮る。


「私たちには私たちの生き方があるの。いや、私たちは私たちの生き方しか知らないの。それだけは絶対に覚えておいて」


 そして笑顔でルシアのことを見る。その笑顔はとても暖かった。


「今からどこに向かうんですか?」


「私が住んでるところよ」


「えっ?それって……」


「シェイクの実家じゃないわよ。私が住んでるアパートよ」


 ルシアは内心がっかりしていた。もしシェイクの両親と会うようなことがあれば、と思っていたがどうやらその期待は見事に裏切られてしまった。


 街灯もほとんどない道をルシアを乗せた車が走る。この国に入ってから対向車というものがほとんど走ってこない。ルシアが質問し聞いたところ、車を持っているのはかなりの上流階級くらいしか持っていないとのことだった。


「じゃあ、館長さんってものすごくお金持ちなんですか!」


「お金持ちならこんな固いシートの車なんて持ってないわよ。これは中古の中古品。『国立記念館の館長が車を持ってないなんてこの記念館の品を疑われる!』って言われて無理やり買わされたのよ」


 館長が自嘲気味に話す。ルシアもそれに合わせて笑う。この話以降、車内は和やかな雰囲気で進んでいく。

< 20 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop