シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
「そうか……。悪かったな」


「お前に謝られる筋合いはない。いくらお前が出来そこないでもお前の親だからな」


「まったくお父さんったら」


 母は思わず笑みをこぼす。相変わらず家族の前では強気でいるのはまだまだ元気な証拠だ。シェイクもそれを見てほっと安心した。


 一方の父は銃の飾ってある棚をじっと見ていた。先程まで埃をかぶった銃が今では新品同様に綺麗なっている。


 父はそれを触り始める。もちろん汚さないように手に布を巻きつけた上から。一つ一つの動作を確認するように何度も何度も。動作には全くの異常はなく。手入れもしっかりと行き届いている。自分以外でここまでの出来に目が見開いていた。


「これは誰がやった?」


「シェイクですよ」


 それを知った父はすぐにおいてあった場所に銃を戻す。まるでそれを認めたくないかのように。父はシェイクに背中を向けたままの状態から離す。


「……ろくにフラフラしていたわけでは無さそうだな。これほどの銃の手入れが出来れば……」


 そこで父はシェイクと目があった。一度大きく咳払いしてカウンターの奥に消えてしまった。


「まったくお父さんったら。息子の前では強くあろうとするんだから」


「母さん。俺……」


「分かってるよ。まだ旅を続けるんだろ?でもここはお前の家だ。いつでも帰ってきなよ」


 シェイクはうん。とゆっくり頷いた。母もそれが聞けてうれし涙を流していた。


「そういえばうちに来る途中の学校が記念館になったの知ってるかい?」


「そうだ。あいつ館長になって別のアパートに移ったんだよな?場所分かる?」


 そう言うと母は紙に地図を書いてくれた。場所はここからそう遠くはないらしい。


「ありがと。それじゃ行ってくるよ。親父にも……よろしくな」


「分かってますよ。まったくうちの男は……」


 母のぼやきを聞き流すようにシェイクは車のエンジンをかける。今は三年前とは違う。今度は逃げるためじゃない。堂々と出発するんだ。それの証拠に母が家の前で手を振ってくれている。


 シェイクはクラクションを一度、手短に鳴らして出発した。ルシアを迎いに行くために。
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