シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
 国の中を走って程なく道は狭く舗装もなされていない。道の両側が住宅から水田に変わってきた。水田の中では何かを植えている人の姿が見える。



「ずいぶんへんぴなところまで来たね。さっきまでの景色が一変したって感じ?」



 ルシアの表情も変わっており、少し退屈そうに水田を眺めている。街並みの景色よりこの水田の景色の方が長い。変化の乏しい風景に飽きっぽいルシアが退屈するのも無理はない。



「シェイク~。どこに向かっているの~?」



 退屈そうにルシアはシェイクに聞く。今では風景を見ることもせず助手席のシートを思い切り後ろに下げてくつろいでいる。



「……」



「シェイク?」



 ルシアがシートを戻してシェイクの顔を見る。先程までの柔らかい表情はなく、厳しい表情をしている。そういえば風景が水田に変わって以降、彼は何も話していない。どうやらこれから向かう先に彼がこの国から出て行った理由がそこにあるのかもしれない。



 車がブレーキをかける。慣性の力が眠っているルシアを叩き起す。下げているシートをゆっくりと起こし、大きな欠伸を漏らながら体を伸ばす。



「シェイク?ここはどこ?」



 目の前にある建物は木造で作られた大きな建物だ。二階建ての建物が二棟とアーチ状の屋根が特徴的な建物があるだけだった。今シェイクが車を止めている場所も広くここから建物まで数十メートルの距離はゆうにある。



 シェイクはエンジンを切って何も言わずに建物に向かって歩いていく。



「ちょっとシェイク!」



 ルシアの声が聞こえないといった感じで建物に向かって歩みを止めようとしない。ルシアも黙々と歩き続けるシェイクの後ろ姿を追っていく。



 シェイクたちが入った入口とおぼしき場所にはやはり木で出来た棚のようなものがずらっと両脇に並んでいる。しかしその中にはすべて何も入っていない。



「ちょっと……。これはなんなのよ?」



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