シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
 二人は話す言葉もなく俯いてしまう。館長がルシアの言葉に同調する。


「はい。もしこの事件が起きていなければここの生徒たちは今、十六から十九歳でしょう。学校を卒業し働き始めて、早い人は結婚をしていてもおかしくはない歳です」


「館長さんはものすごく若く見えるんですけど、何歳ですか?」


 ルシアの何気ない質問にシェイクはハッとして二人から距離を取った。すぐにルシアが気付く。


「シェイク?どうしたの?」


 シェイクの顔色が心なしか青く見える。


「悪い。先に行っててくれ。少し気分が悪くなった。お手洗いはどこかな?」


「お手洗いでしたらこの廊下を戻って玄関の手前にございます」


 シェイクがありがとう。と言って足早に来た道を戻って行く。ルシアはその様子を不安そうに見ていた。


「大丈夫かな……」


「多分、今の話を聞いて気分が悪くなったのかもしれません。ここは国としても最大級の記念館です。この校舎をすべて見終わって気分を害される方が後を絶たないのです。それだけこの記念館ではこの事件のことを忠実に再現しているのです」


 そう言って館長が廊下を歩き始める。それに気づいたルシアは、


「シェイクを待っていた方がいいと思うんですが……」


「大丈夫ですよ。ここの記念館にはちゃんと順路というものがあります。十メートル間隔に順路を示す表示があるので、遅れている方も自分のペースで見ることが可能です。それに……」


「それに?」


 館長が、なんでもありません。と言ってルシアと一緒に順路通りに進み始める。
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