シェイクとルシア~黒き銃を持つ二人~
「くそっ!」


 シェイクは拳で洗面台を叩きつけた。八つ当たりだ。自分が不甲斐ない。この不甲斐なさが自分だけ留まらずに数百という人の人生を歪めてしまった。


 シェイクは自分の姿を備え付けの鏡で見る。そこには顔を青くした少年がそこに立っていた。すっかり弱ってしまい、つい先程までの少年とは違う人になりかけていた。


「これが本当の俺……。なにも守れず、自分のプライドを守るためだけに犠牲になった奴らに申し訳が立たない……」


 そう言ってシェイクは右腿にしまってある自分の銃を取り出した。リボルバー式の大口径は父親からもらった初めての自分の銃だった。これを使って幾度となく自分の命を守り、同時にいくつもの命を奪ってきたものだ。今度は自分の命を奪うためにそれを使おうとしている。



 自分のこめかみに銃口を押しつける。シェイクは鏡越しに自分の姿を見て笑った。嘲笑のような笑いだった。自分の姿があまりにも滑稽だったからだろう。でもその姿を見るのはもう残り数秒だ。



 ハンマーに手をかけたところでシェイクは周りを見渡した。何かが聞こえた感じがしたが気のせいのようだ。シェイクは再びハンマーに手をかける。ハンマーを下げて、引き金を引いてしまえば全てが終わる。
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