桜舞~ひらり~
家に帰って、明日の事だけを考えた。
振り返る程、思い出がない事にも気づく。
あっという間に終わった恋だった。



「明日、朝早いんだっけ…」


そんな事を思いながらも
明日着ていく服を選ぶ。

もし、仕事に生きれる女だったら、
これぐらいの痛手は、
あっという間に薄れていくだろう。


やりたい事も、目標も何もないアタシは、
毎日、ただ時間が経つのを待っているだけ。
仕事に意味を見い出せないまま
淡々とこなす、ただの仕事。



「アタシ、何も持ってない…」

花柄のスカートを手にしたまま、
この手の中は、空っぽだと気付く。

「得たよね?」

22年もの間、何も得ないなんてない
と自問自答を繰り返す。




「…落としちゃったんだ」





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