KISSKISS


眠る顔をじっと見つめて、あたしは泣いた。


涙の理由は…


悲しいとか辛いとかじゃなくて…


―…人を好きになる苦しさも知ってしまったから。


眠りの中で正しく呼吸する唇にゆっくりと自分の唇を近づける。


―…起きないよね?
―…気が付かないよね?


緊張で頭の中をぐるぐると言葉が回る…


…―――――


「……何しようとしてんのよ」


我に返り、数センチの所で止めて涙を拭うとブランケットをかけ、起こさないように部屋に戻った。


…―パタン


「あー…焦った」


アイツが、途中で起きていたなんてあたしは知らなかった。

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