「そっか、ありがとな。」


男の子は笑った。
なんか、安心できるような人懐っこい笑顔。


「あ、俺、滝本魁って言うんだ。よろしくな。」


滝本魁・・・・。
名前が一緒だ。


『あたしは、加納ひかる。こちらこそよろしく。』


海と同じ名前なのに、正反対の性格。世の中、それぞれですねぇ。


「じゃ、またな。」

『うん。またね。』


手を振って、駆け出した滝本くんの背中を見送り、あたしも教室へ歩き出した。


教室では、何やら女子の情報交換が行われている模様。


「遅いぞー、ひかる!」


あたしに気づいた歩が、声をかけてくれた。


『おはよう、何してんの?』


鞄を自分の席に置き、集団に混ざる。話題は、入学式と正体不明の男の子のことだった。


『ああ、その話か。』

「入学式のは、海くんってのは、すぐに分かるよ。」


紗知が腕を組み、窓際で春の陽射しを受けている。
絵になる光景だ。


「正体不明の男の子の情報、あかりは持ってないの?」

「残念ながら」


歩の問いかけに、あかりは肩を竦めた。さすがのあかりも、転入生じゃ情報を得られなかったらしい。


『あたし、知ってるよ』


あたしが言えば、みんなが大きく仰け反って、あり得ないと連呼した。

失礼極まりない。





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