Thanks
(洋side)
それはあっという間だった。
あのヘラヘラ、フニャフニャした和之があっという間に男、4人を倒してしまったのだ。

『お前、弱いんじゃねーのかよ?!』
『弱かったら洋なんて迎えに来ないよ!』

き、厳しい…

『お前ら…覚えてろ…よ…』

力尽きる寸前の男が指を差してそう言う。
和之はその指を踏ん付けた。

『商業科をなめんなよ? 不良の集まりだぜ。』

和之。
自慢になってねーよ…




『あー! 腹減った!』

和之と俺はそのまま駅前のファミレスで夕飯を食べる事にした。

『あッ あの…ご注文は…』

何だか妙に店員の態度がよそよそしい。
席も何故かトイレの隣に案内された。

『洋、何でルミと別れたんだよ。』

和之は席につくなり、そう切り出した。

『知ってたんだ。 理由なんてねーよ?』
『…』

和之は明らかに不機嫌そうな目をした。
俺の答えが気に入らないんだろう。

『強いて言うなら、あの女より和之の方が楽しいからだよ。』
『…え?』

あ、赤くなった。

『本当に単純な奴!』
『う、うるせー!』

和之を傷付けたくなかった。
余計な事で悩ませたくなかった。

もしかしたら俺、和之の事好きなんかな…?

『あー! 何か俺らの会話、ヤバくねーか?!』

真っ赤になりながら言う和之。

『さぁ?』
『絶対にヤバく思われてる! ちょっと便所で顔冷やしてくるわ!』

和之は早口でそう言うと隣のトイレに入っていった。

何だか面白くて俺もついていく。

『ついてくんなよ! おホモ達だと思われる!』
『ぷっ! んなわけあるか!』

大笑いしながらトイレに入ったその時、俺達は言葉を失った。

鏡に映った自分達の顔は腫れ上がり、赤や青、紫…
色とりどりのアザがあった。

『まさか… 店員の態度がおかしかったのは…』
『ッあはははは! 和之すげー顔!』
『洋だって! 今日から洋のモテモテ人生はおしまいだぜ!!』
『あはははは!』

俺達はお互いをけなしあって大爆笑した。

この日、俺に初めて「親友」という大切な人が出来たんだ。
< 11 / 94 >

この作品をシェア

pagetop