Thanks
(新side)
『新! 返しなさい!!』

紗奈は必死の形相で後を追う。

2階を3回ほど往復して階段を下りた時…

『あ、おはよ〜。』

雅と会った。

『雅! 新を捕まえて!』

紗奈の頼みに雅はわけのわからぬ様子で俺を捕まえる。

『2人が追い掛けっこなんて珍しいね、何かあった?』
『新が私から旅行券を盗んだのよ!』
『旅行券…?』
『雅を誘おうと思ったのにッ!』

雅はしばらく考えた後でニッコリと笑顔を見せる。

『紗奈と旅行行っといで♪ 俺の代わりに!』

そう言ってチラリとポケットから見せたのは紗奈と同じ旅行券。

『あ、それ!』

俺は瞬時に理解し、チケットを指差した。

『察しの通り、旅行券♪ 雛姫を誘おうと思ってね。』

勝ち誇ったように鼻で笑うと雅はそのまま階段を上っていった。

『あの野郎…』

チケットを握りしめて紗奈を見る。

『な、何よ…!』
『紗奈! マジで俺と温泉に行ってくれ!!』
『何であんたと!』
『雅も同じ所に行くんだよ!『行くわ、私も。』

紗奈は最後まで聞かず俺の手を握りしめた。

『さすが、話がわかる…』
『だって雅は雛姫先輩と行くんでしょう?』

にっこりと笑う紗奈の目は決して笑っていなかった。
さりげに雅に断られた事怒ってんなぁ…

しかしチケットは3枚。
行けるのは6人ってわけだ。

『もう1人は誰が行くんだろう…』

雅、雛姫、真由、紗奈…
そして俺。
何となくもう1人、重要な人がいたような…

『まぁ、いっか♪』
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