Thanks
時刻は夜の12時…
波の音と風の音だけが響く。

『(雛)寒い~!』

やっぱ浴衣と羽織りだけじゃ駄目だった。
寒くて余計に目が覚めたし…

それにしても今日は色々あった…
たまには皆で旅行もいいな…

雛姫がそう思いながら空を見たその時…

『ひっくし…ッ』

どこからか誰かのクシャミが聞こえた。

まッ まさか!!
変な人?!

こんな夜中に海に来た私って馬鹿?!!

一瞬で脳裏に「拉致」や「誘拐」が浮かんだ。

『こんばんは、雛姫も寝れないの?』

しかしすぐに消えた。
だってクシャミをしたのは…

『雅?!』

雅だから…

『なぁに泣きそうな顔してんの。』

はにかんで笑う雅。
安心からか、雛姫の目からは大量の涙が零れた。

『変なオジサンかと思ったぁ~!!』
『あはは! 俺でよかったなぁ♪』
『本当っ 雅で良かったぁ!』

………って良くないし!!
1番会いたくなかったのに!

『わッ 私帰る!』
『は? 感じ悪いぞお前…』

だって…
絶対に裸見られたもん…

『せっかく雛姫と2人になれたのになぁ…』

雅ははにかんだように笑うと静かに砂の上に座った。

『…ちょっとだけ…話してく…』

それを見たら帰れなくなり、少し離れた所に座る。

『もっと近くに座ったら?』
『い、いい!』
『…声、聞こえにくいんだけどね…』

確かに波の音がうるさくて聞こえづらい。

でも近くにいったら…

『聞かせたくないのも聞かれるし…』
『え? 何?』
『何もないっ!』

ドキンドキンって…
こんな余計な音まで聞かれてしまう…

雅といるといつも鳴ってるこの音…

聞かれたら絶対に馬鹿にされるもん…
< 28 / 94 >

この作品をシェア

pagetop